リオで伝える、日本のこころ

平成26年4月17日

【第1回】生け花講師 大塚益代(おおつか・ますよ)さん

レッスン中の大塚先生(左)
 大塚さんは、リオデジャネイロ日伯文化協会にて生け花を指導して、今年31年になる大ベテランの先生です。月2回の講習のたびに、サンパウロから通ってきています。授業用の花はサンパウロからすべて一人で持ってくるだけでなく、花が潰れないように、行きはバスで通う徹底ぶりです。レッスンの日、13時を回ると、教室には大塚さんが持ってきた花が生徒一人一人のためにバケツに移され、美しく活けられるそのときを待っていました。
今回の花材は「かしわ」です
 「大きく!自然のままに!大胆に!」授業が始まると、元気の良い指導が飛びます。大塚さんが教える生け花教室は、生徒数28人の大所帯。一人一人が花を活け、完成したものを指導してまわりますが、生徒がたくさんいるので休む暇はありません。レッスンの合間には5人の初心者に基本講習も行っています。一瞬腰を押えて辛い表情を見せる時があっても、「お花があると頑張れる」と元気に答え、4時間の授業を毎回こなしています。

 日本語を話す生徒へは日本語で、ブラジル人へは通訳をつけて、指導が行われます。ただし、生徒にとって言葉よりも大切なのは、大塚さんがどう活けるか、という一点です。先生のレッスンを長く受講している生徒は、日本語の単語が自然と理解できるようになるといいます。生徒の作品を一見して、大塚さんが発する「あのね…」の一言に、ぱっと集まってくる生徒達。日本人話者でなくとも、大塚さんの指導に集中して耳を傾けています。
授業の合間に、生徒の皆さんと
 大塚さんは生け花教室の他にも、リオ州内各地の文化活動に参加し、デモンストレーションや華展を行っています。2013年3月にはコパカバーナ要塞での生け花展やワークショップで大盛況を得ました。「日本人は花が好きだというが、ブラジル人も大好き。家に生花を飾るのは、むしろブラジル人の方が多いくらい。」と語る先生。西洋発祥のフラワーアレンジメントと異なり、「一つ一つの花の高さが異なるから、それぞれが美しく見える(先生談)」生け花は、整って丸くならないところにその美学があると言われますが、その感性は日本人だけでなく、ブラジル人にも共通のものだと大塚さんは言います。受講する多くの生徒は、デモンストレーションや華展で生け花にふれ、西洋的なアレンジとの違いや美しさを感じて入門してくるそうです。とはいえ、生徒達の性格や受講のきっかけ、花に対する姿勢は十人十色。大人数で基本講習するときなどは苦労されています。それでも、「美しいと言われると、また教えたくなる」と立ち上がって指導を行う先生の笑顔が印象的でした。