海外交流審議会が町村大臣へ答申を提出
Ⅰ 海外交流審議会とは
外務大臣の諮問機関である海外交流審議会(会長:熊谷元日立製作所副社長)は、10月5日答申を町村大臣へ提出しました。海外交流審議会は平成14年10月の発足以来、「国民本位の領事行政サービスを実現する中長期的な施策の検討」「海外邦人安全対策の推進と危機管理への対応能力強化」「在日外国人・日系人との連携強化」の3点について約2年間に渡り議論を行ってきました。
※海外交流審議会これまでの主な実績
平成14年10月18日
第1回総会開催
平成15年
1月28日 第1回領事改革部会開催
同日 中間報告「新しい領事業務のあり方(領事の理念と原則)」発表
平成15年2月5日 第1回外国人問題部会開催
平成15年6月30日 第一次取りまとめの発表
平成16年10月5日 答申「変化する世界における領事改革と外国 人問題への新たな取組み」を大臣へ提出
Ⅱ 答申の概要
答申は「国民の視点に立った領事サービスの強化」「海外における日本人の安全対策・危機管理」「外国人問題」を外務省領事部門の三つの重要課題としています。この三つの重要課題の下に、内容を「領事改革」と「外国人問題」の二つに分け、「領事改革」では国民の視点に立った領事サービスの強化を、また「外国人問題」では外国人問題を扱う政府の体制整備の要望など、具体的かつ内容の濃い提言がなされております。
Ⅲ 外務省の取組み
外務省としては、この答申をもとに「領事改革」及び「外国人問題」に対する取組みを更に強化していく所存です。特に「領事改革」については、在留邦人の皆様に対する領事サービス向上に繋がることから、より積極的に取り組んでいく所存です。
※ この答申は外務省ホームページでご覧頂くことが可能です。 http://www.mofa.go.jp/mofaj/annai/shingikai/koryu/
Ⅳ 答申のポイント
「総論」
1.グローバル化と相互依存関係が更に進む国際社会で、
○日本が活力と繁栄を確保するためには、各国との交流、協力、切磋琢磨の 強化が必要。その前提となるのは、国際間の円滑な人的交流の確保
○国際間の人の円滑な交流の促進に、これからの領事業務の重要性が集約される
2.三つの重要課題
-国民の視点に立った領事サービスの強化
-海外における日本人の安全対策・危機管理
-外国人問題
3.領事局の発足
本年8月の領事移住部の領事局への格上げを、それまでの本審議会の議論を反映したものとして歓迎
「領事改革」
1.国民の視点に立った領事サービスの強化のための提言(抜粋)
○領事窓口サービスの改善と血の通った対応
○領事シニアボランティア制度等を通じ、サービスのあり方についての様々な視点と知恵を学び、活用すること
○領事出張サービスの充実と遠隔地に居住する日本人とのコミュニケーションの改善
○領事業務のIT化を推進
○
租税、年金、運転免許その他の分野における在留邦人の利益の保護と利便性の向上
2.海外における日本人の安全確保・緊急事態対応のための提言(抜粋)
○危機に強い外務省を実現するための、在外公館における24時間体制の強化や在外公館と海外における邦人との情報共有・連携の強化
○国民自らが高い安全意識を持つことができるよう一層の広報啓発に努める
○現地及び国内の専門家(民間危機管理会社の専門家、医療関係者等)との連携強化
3.領事担当官の能力向上と専門性の確立のための提言
○領事担当官として必要な多様な知見を体得できるような研修の強化
○適材適所の人事配置。領事定員ゼロ公館の解消
4.今後に向けて
○今後一定期間経たところでレビューを行い、その結果の公表を要望する
「外国人問題」
1.基本的考え方
○異なる考え方や価値観から学び、そこから良き刺激を受け、我が国の活力を高めていくことにつなげていくことが必要
○在日外国人の更なる増加が予測される中、雇用、社会保障、子どもの教育などの問題を直視し、在日外国人問題、外国人労働者受入れ問題及び犯罪・テロ・治安対策とのバランスにつき、実質的協議を行い、具体的対応をとっていくことが必要
○社会の安全・秩序に対する国民の関心の高まりに配慮。どのように秩序立って外国人を受け入れていくかについて国民的コンセンサスの形成が必要
2.在日外国人問題
(1)喫緊の課題に対し以下の措置をとるよう提言する。
○在日外国人の雇用・居住・社会保障等に係る状況の改善
就労実態、居住状況、社会保険への加入状況、子どもの就学状況等を的確に把握することについて、省庁横断的な対応を検討
○義務教育年限の外国人の子どもの教育機会の確保
公立小中学校における受入体制の整備、教育問題の改善のための行政機関、地域社会、企業等による連携、各種学校設置認可基準の緩和
○外国人労働者とその家族への語学教育等の支援
現地事前研修の充実、訪日後の語学教育等の支援における官民の連携
(2)外国人を受け入れる側の日本社会の各層において、多様な考え方・価値観に対する理解を一層高める努力をしていくことが必要
3.外国人労働者受入問題
(1)外国人労働者受入れの現実と今後のあり方
従来の方針を基本的に維持するとしても、現状の分析や社会のニーズを踏まえ、単純労働者の受入れへの対応等につき十分に議論し、国民的合意の形成を図る
(2)専門的・技術的分野の外国人労働者受入れの拡大のための提言
優秀な人材を受け入れるための環境整備
○東アジア諸国とのEPA交渉
専門的技術的分野の人材受入れへの積極的な取組み等
○在留資格制度の基準・運用の改善
専門的・技術的分野での就労のための在留資格の基準・運用の見直し、在留期間の上限の伸長、永住資格付与の条件の透明化・緩和
○研修・技能実習制度の改善
研修生の適切な選抜と適正な受入体制の整備等
4.人的交流拡大と犯罪・テロ・治安対策
(1)人的交流拡大のための提言
○韓国・台湾については、短期滞在査証の免除を実現
○中国団体観光旅行の査証発給対象地域を拡大
○青少年交流の拡大の観点から修学旅行査証免除・手数料免除等を促進
○留学生・就学生の厳格な在留資格審査と、受入支援策の充実
(2)犯罪・テロ・治安対策への提言
○出入国管理の厳格化
IC旅券の早期導入の努力、省庁横断的な場で出入国管理措置のあり方を検討。
○不法滞在者・外国人犯罪の取締りの強化及び外国人の人権侵害の防止等
-犯罪対策閣僚会議の「行動計画」に基づいた犯罪対策を着実に実施
-不法就労を斡旋するブローカー、雇用主の摘発を強化。人身取引防止のための上 陸許可基準の見直し、被害者保護の強化等も検討
-国際組織犯罪防止条約補足人身取引議定書の早期締結
5.外国人問題を扱う政府の体制整備について
上記2から4までに掲げた外国人問題を省庁横断的に扱う政府の体制の整備
(了)