助け合いの心を教えながら、専門分野の技術を磨く。

―「職業訓練所(ミナス州ベロオリゾンテ市)増改築」のその後―

 

職業訓練から始まった教育施設

神の摂理プロジェクト協会は、青少年の貧困を救済するために、ミナスジェライス州ベロオリゾンテ市内の3つの地区で職業訓練教育活動を行っています。

創設したのは、協会の会長、マリオ・ポゾリ神父です。1988年、ベロオリゾンテ市の貧しい青少年の様子に心を痛められ、同協会を設立しました。残念なことに、当館が訪問した際には、ご高齢と最近の体調の悪化のために会長職を退かれたとのことです。

さて、職業訓練教育は13歳~15歳を対象に、料理、裁縫、電気工、大工の各コースでの訓練を行っているとともに、16歳~18歳の少年には、社会に出て就職或は自営業で自立できるよう上級職業訓練を実施しています。また、これらの施設では、単に職業訓練を行うだけでなく、4~6歳の子供たちには幼児教育を、6~14歳には補習学習、手芸作業、音楽、スポーツなどを教えています。

さらに、活動時間帯は、午前の部と午後の部とに分かれており、午前の部は朝食と昼食を、午後の部では昼食とおやつを無償で提供しています。もちろん、職業訓練自体も無料で実施しています。

 

 

神の摂理プロジェクト協会のタクアリル地区職業訓練所(幼児教育も実施しています)


バラック小屋を改修

日本が支援したのは、3つの地区のうち、タクアリルという地区で、13歳~15歳の職業訓練コースの校舎の増改築です。当時、バラック小屋で教育を受けていたそうですが、状態が非常に悪く、雨漏りは生じる、ガラス窓はない、戸締りはできないといった劣悪な環境にありました。また、雨漏りが生じたため、大工以外のコースが使用不可能となり、別の場所での訓練を余儀なくされていました。フォローアップに訪れた際、現在でも運動場に建物の一部が残っていましたが、目を疑うようなボロボロの建物です。

日本の支援後、ガラス窓のついたコンクリート・レンガ建ての建物に生まれ変わりました。2階建てなのですが、2階部分は市からの援助とのことでした。

2013年12月5日に訪れた際にも、4つのコースすべてが実施されており、風通しがよく採光も十分な環境で子供たちが懸命に訓練を受けていました。

運動場から見える外壁には、日本が支援したことを示すマークが大きく掲げられています。

 

 

現在も一部が残っている以前のバラック小屋(もうすぐ撤去予定とのことです)

 

職業訓練コース(大工コース)

 

(電気工コース)

 

(料理コース)

 

(裁縫コース)

 

運動場から見える記念プレート

 

 

大工、電気工、裁縫、料理、だけではありません。

さて、少し当施設の取り組みを紹介したいと思います。

職業訓練コースでは、大工、電気工、裁縫、料理に分かれています。

大工コースは、使わなくなった木材などを利用して箱や車の模型などを作成していました。電動のこぎりなど危ない機器を使った作業は生徒にやらせず、先生が行うなど安全面にも配慮しています。

電気工コースは、家庭の配電盤の仕組みなどを教えています。大工コースも電気工コースも13歳~15歳の職業訓練コースでは基礎的なことを教え、16歳以上の上級職業訓練コースで専門的なことを教えています。

裁縫コース、料理コースは、女子生徒のみならず男子生徒もいました。裁縫コースではミシンの使い方を、料理コースではお菓子作りに取り組んでいました。

さらに、これら専門分野の授業の他に、政治、宗教、人間形成といった一般科目も教えています。

 

 

大工コースの生徒が作成した作品

 

大工コースの生徒が作成した机と椅子

 

料理コースの生徒が作ったお菓子

 

一方、小さな子供たちは身の回りにある生活用品などを有効活用して様々なものを作っています。例えば、ペットボトルの一部を切り取って天井からつるす飾りにしたり、アイスキャンディの棒でオブジェを作ったりしています。

 

 

 

ペットボトルの底の部分や上部を切り取って作った飾り

 

鉢の部分はリンゴのケースで作成

 

アイスキャンディーの棒を使って

 

卒業後は

職業訓練コースを卒業すると6~7割はそのまま就職するそうです。また、このほか全国工業訓練機構(SENAI)の先生になったり、この職業訓練所の先生になったりする者もいるとのことです。実際、働いている95%の先生がこの地域の出身ということで、この協会が地域の雇用促進にも役立っています。

職業訓練コースを終了すると、協会が発行する卒業証書がもらえます。また、SENAIが当施設の活動をチェックしており、卒業の際には、協会の卒業証書に加えて、SENAIの証明書も手交されます。これらの証書が就職の際に大変有意義に働くそうです。

 

この施設では、「自由」「尊敬」「人間形成」といったことを重視し、国が違っても、団結し、友情を深め、助け合っていくということを教えているそうです。

我々が訪れた際には、施設全体で我々の訪問を歓迎してくれて大変感動しました。彼らが大人になったときも、助け合い、感謝するという気持ちを忘れずに持ち続け、専門分野で活躍することを願っています。