環境を大切にし、雇用も促進する
―「資源ゴミ回収(ミナス州ラブラス市)強化」のその後―
資源ゴミ回収のためのトラックを供与
ラブラス市は、ミナスジェライス州の州都ベロオリゾンテ市から南に230kmにあり、ベロオリゾンテ市から車で3時間ほどかかります。人口は10万人程度と比較的大きなまちであり、主な産業は、自動車部品製造業、農牧業、被服製造業などです。ラブラス市では、資源ゴミは有機ゴミと一緒に市のゴミ埋め立て地に捨てられており、外傷や感染病などの健康被害にさらされながらも、このゴミ埋め立て地から資源ゴミを拾って生活をしている人々も見受けられます。
ラブラス・資源ゴミ回収者協会(ACAMAR)は、1998年に環境保護基金NGOの支援により設立された非営利団体で、資源ゴミの回収と分別を行っています。この活動により、資源ゴミの再利用を推し進め、まちの環境改善を図るとともに、資源ゴミを拾って生活の糧としていた人々を回収の担い手として雇い入れています。
日本の支援前は、古いトラック3台で資源ゴミの回収にあたっていましたが、まち全体のニーズに応じきれるものではありませんでした。トラックがもっとあればより広範囲の資源ゴミ回収・分別が可能となり、さらなる公共利益の実現がもたらされるということで、日本の支援により、2011年2月に木製とアルミニウム製の荷台を取り付けた2台のトラックを購入しました。
ACAMARの様子 |
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2013年12月4日、フォローアップとしてACAMARのゴミ収集施設を訪れました。敷地には、トラックを駐車するスペースと、ゴミを収集、分別し、梱包する作業スペースがあります。訪れたのは午後1時前ほどですが、多くの方が作業をしている最中でした。庭には、購入したトラックが1台ありました。午前の回収を終えて戻っていたのです。ドア部分と荷台には日本の支援を表すマークが取り付けられています。このマークとともに毎日街中を走り回っているのですから、きっと多くの方の目に触れて日本の功績を印象づけていることと思われます。
供与したトラック(木製荷台付き)。日本の支援のマークが付いています。 |
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供与したトラック(アルミニウム荷台付き)。 |
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作業の様子 |
ダマシ事務長 |
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増えたのは回収ゴミの量だけでなく
ACAMARを運営しているルイス・タデオ・ダマシ事務長によると、トラック購入後、資源ゴミの回収はラブラス市のほぼ全域をカバーするに至り、2010年と比較して、ゴミ収集地点の数は205地点から250地点に、ゴミ回収量は806.5トンから約1,000トン(2013年は訪問した時点で977トン、2012年は1,030トン)に増えたとのことです。また、これに伴い、回収・分別に携わる作業員の数は2010年の26人から36人に増加しています。来年はさらに30人の採用を見込んでいるそうです。
回収するゴミについて、増えているのは、単に量だけではありません。日本が支援した当時は、収集するゴミの種類は紙、プラスチック、金属、木材といったものが中心でした。現在は、これらに加え、パソコンや携帯電話といった情報通信機器、河川の水質汚濁の原因ともなる廃油を収集しているとともに、寄付された破砕機を用いてガラスの収集と処理を行っています。このように資源ゴミの種類もまた増えているのです。
また、日本の支援後、周囲の支援も増え始めたとのことです。実は新しいトラックがもう一台増えていました。当館が提供したものより一回り大きい6トントラックです。これは最近、連邦政府・保健省から提供されたものだそうです。また、周知広報活動に使っているTシャツやチラシの作成費はミナス州が提供しています。また、ラブラス市からはガソリン代の他、販売実績に応じた補助金が出ているそうです。
ダマシ事務長曰く、「日本人はまじめで信頼性があるため、その日本政府が支援したところであれば問題ないと思われている。」
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ガラスを破砕する機械 |
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ペットボトルの圧縮機 |
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連邦政府・保健省から提供された6トントラック |
尽きないニーズと今後の課題
しかしながら、「これでもまだ十分でない」とダマシ事務長はもらします。ラブラス市の全域を完全にカバーするにはまだ人員やトラックが必要です。ラブラス市の周辺8市をみてもこのような活動を行っているのはACAMARだけですので、ニーズはまだまだあるとのことです。ラブラス市からは補助金が出ていますが、まだまだ十分ではないとともに、現在の作業スペースではさらなる資源ゴミの増加に対応できないとのことです。現在、ACAMARはより広い作業場に移転すべく、検討を進めているとのことです。幸い、市内の土地をある企業が無償で提供してくれたそうです。ただし、建物の建設にかかる費用のめどが立っておらず、支援者を探しているところです。
また、元々あったトラック3台も、1971年、79年、85年製と古く、度重なる故障でかさむメンテナンス費に悩まされています。
移転先の土地 |
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ゴミ収集だけではない、ACAMARの活動
ACAMARは単に、ゴミの回収・分別を行っているだけではなく、ゴミの再利用や環境配慮の必要性、重要性を普及啓発する活動も行っています。街中で開かれる展示会のようなイベントがあるときには、ブースを出展してチラシなどを配り、人々に呼びかけをしています。また、このような普及啓発活動の際には、地元の小中学校や大学とコラボして取り組んでいるそうです。
ACAMARのマークを取り付けたトラックで毎日町中を走り回っていることに加え、このような普及啓発活動も行っているものですから、街の人々はみんなACAMARを知っているとのことです。また、メディアに取り上げられることもあり、取材を受けた番組内容はYouTubeで見ることもできます。
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周知活動用のチラシとTシャツ(裏にはスポンサーのロゴマーク入り) |
「ゴミを拾う人々を減らしたい」
このような活動を始めたきっかけをダマシ事務長に訊いてみました。「一つは、環境に対する意識の変化をもたらす活動がしたかった。もう一つは、学歴がなく職にありつけない人を雇用して、ゴミを拾う人々を減らしたいから。」
実際に、現在雇っている従業員、来年雇用予定の方々の多くは、街でゴミを拾っていた人々だったそうです。
別件でミナス州政府を訪問した際に、ミナス州は3R(ごみの削減、再利用、リサイクル)の推進に取り組んでいると聞きました。このようなACAMARの活動が州を代表する活動としてより着目され、環境改善と雇用促進につながればと願っています。